ディア フレンド(私の知人) text by yuji arai.

Benjamin Lee (Photographer)

私が最初に彼に出会ったのが、かれこれ25年前になるだろうか?NYのマンハッタンの画廊で彼の作品が展示されていた。時は、雑誌インタビューのアートディレクター、アンディー・ウオーホルがポップデザインアートを流行にしていた時代であった。
この時代のNyアートやファッションは、マンパワーによるアナログテクニックが主流な作品層がマンハッタンのギャラリーをにぎわせていた。
当時のNyには、東洋人のアーティストは珍しく。ギャラリーの前に展示していた彼の顔を見て、初めてなのに、なんとなく親近感が沸いてきたのを憶えている。
写真展は、色とりどりのカラフルなファッションやアートの色彩の中で、ひときわ目立ったのがベンジャミン氏のモノクロ写真展だった。その作品は、力強く、そのポートレイトの人物の空気感に、自然に引き込まれていく。そんな不思議な彼の作品だった。

その後、2004年。私はパリから帰郷。2005年愛地球博覧会のアート演出のため東京へ戻った。私は、相変わらず夜の街へ羽を伸ばしに外へでた。その夜である。ある青山のラウンジバーで、ベンジャミン氏に再会した。その夜の彼はNYの事を懐かしく話してくれた。
そして、ベンジャミンの気さくな誘いをお受けして、彼の青山のアトリエへお茶に御呼ばれした。この写真は、まだ世の中に公表されていないので、写真はあげられないが、今年の一番の私の作品だと、にこやかに話してくれた。その時に見せてくれた一枚の写真。日本の役者のポートレイトだった。彼の名前は:渡辺けん:氏。私はなるほど。と息を呑んだ。
彼のポートレイト作品にはひとつのマジックがある。スターの本質を見出す写真能力である。新作のポートレイトモデルの瞳には様々な正義感や邪心やその他の感情を消し去っていた。通常のポートレイト作品には人のどろどろした感情があらかさまに出るのが本当なのだが、ベンジャミンの作品にはそれがない。逆にその人のあくを消し去ってしまう写真に仕上げる。
不思議な空気感である。が ひとつ付け加えなければならないのはポートレイト作品なのに、その人の一瞬の無表情の素を写真にしてしまう感性が、ベンジャミンの写真独特の味と感じられる。その瞬間がベンジャミンの技術と感心させられる。全てのポートレイトのモデルの視線とその方向の空間に、そのモデルの思想空気感が表現されている。彼には脱帽される。
モデルは有名人であるから、それなりの空気感がある。が しかし、彼のレンズを通してのし空気感は、有名人であればあるほど、今までと違う人間本質の何かをまた新しく掘り出し、作品に映し出す。改めてポートレイトの大切さを思い出させてくれた。
私も将来有名になって、ベンジャミンにポートレイトを撮ってもらえるように精進するとしよう。
アトリエを跡にした私は、空を仰ぎ見た。薄青い空が東京の春をかもし出していた。
にこやかに、ゆるりと話しをする彼のおっとりさに救われた東京の午後のティータイムだった。


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