時の流れのままに、、、。

Posted on, by | 9月 1, 1998 | | No Comments

第3章
 それぞれの朝

「ウォウウォウウオー」
字面だけ追ってると狼の遠ぼえ、実はこれ、女性ボーカルの切ないメロディーが流れている。
なんかこれ聴いたことあるよなとか考えつつ、音にすっかりはまりだしてる良平であった。日曜の朝方まったりクラシック聴くのってハイソな家庭の特権ではない。古くは芝浦ゴールドでもDJによって、今、イエローのワーコネとかループとかってクラシックにはまった人とかがまったりしてるんだよね。まあ。クラシック違いダンクラ、ディスコクラシックとかなんだけど….。でも俺はゴールドの昔からこっちのが好き。ハードハウスって言葉が意味として定着を見せ始めた頃、UKあたりで火がつき始めた早いもの。ハッピー系。ピッチ140BPMから流しだされるアゲルアガルこのメロディー。(0.1秒)って俺、思考回路おかしい?これやっぱあれに似てる。「インスピレーション」とかってヤツ。あんま意識してなかったんだけど、これかかるとゲイの子達が「ビビビッ」てきたみたいに席立って「キャー」とかってフロアに行くんだよな。インスピレーションか、よく言ったよな。でもなんかちと違う。えっ、ちょっと待てよ、流れてきたのは日本語。それもミーシャとかウーアとかおしゃれじゃない。深夜のローソンとかで流れてる人気ユニットの曲。
「チェッ歌謡曲ナイトかよ」思わず言葉に出た良平。
「キヤーッ」良平の声をかき消すようにフロアで盛り上がってる人、人、人。聴き覚えあるはずだよな、なんて思いつつフロアを出ようとした良平の耳に水を打ったような一瞬の静寂….。そして天使の声…..。否女性ボーカル。フロアはもう、サンバ、デジャネイロ。喉もカラカラだったが隣の子がビッテルをくれるし、目があった外人もビールを飲めとすすめる。みんなDJブースの方を見て踊るので、DJは教祖状態。一種の宗教だよな。トランスパワーとかってゆうしな、なんて1人ごちていると、DJブースから手招き。
「えっ、何っ?俺?」と良平。
「そうだよ。すんごく楽しそうだから」とDJ。デ、デカイ。布袋寅泰ばりの高身長。でもなんか、クネクネしてる。DJって不健康だからな、なんて訳わかんないこと考えてるとすかさず、ハイネケンを差し出して、
「僕、今日DJサイコーの出来だしー。その辺どう?」とかって頭に手を乗せられた。照れたように手をどけながら、
「スゲェ、イーと思います。カッチースネ。」と良平。
「デショー。ワカルー?ハーイご褒美。スィートなキャンディー。」とかって口に何か入れられた。
「ニガー何これ?」とかってビールで口をゆすぐと眼鏡の奥からDJがニカッて笑ってる。その顔がひどく印象に残ったまま、俺はDJブースにまだいた。
DJブースは気持ちいい。自分が曲かけてるわけじゃないのに、皆自分の方見て踊るし、なんか俺、ヒトラーみたいだ。…………ちょっと寒けがした。鳥肌。震え。俺、風邪かなと思っていると、
「そこ座っときな」とやけに男っぽい声でさっきのDJ。実はゲイかなと思ってたけど、やっぱ違うんだ。こーゆー手合いの人って、でも優しい。早見優って今何してるんだろって何考えてんだ、俺。ぼうーっとしてる、やっぱ風邪なんだ、俺。なんか目にもきてるし。周りがキラキラして見える。と、突然曲はメロディアスなかんじ。運動会のリレーの後のフォークダンスみたいだ。ミキと手握ってるだけでドキドキしたな、あの頃…….。えっ、キスなんてしてないぞ。何だ?目をあけるとさっきの巨人DJ……..。チューとかされてる。でも、まあいっか。….ってよくないよ。でもみんな笑ってる。幸せだなあ、ボカア。って加山雄三。
夢を見た。小学生の時、近所だった健太郎とクワガタを捕りに行くんだ。2人、夢中でとっているんだけど、さっきの女性ボーカルみたいな悲鳴、見ると近くの澄んだ湖にクワガタが溺れてる。すわっと飛び込む。何やってんだ、俺。クワガタ採集してんのにな。救ってどうするって考えるひまもないくらい、とっさに。見ると、オスなんだよな。「オラオラ」とか言ってる。こいつ。健太郎は知らんぷり。きれいな水色の湖かと思ったら、これ何?茶色、の蜜じゃん。ネバネバからまる。ちょっと生暖かい。クワガタはうまそうに飲んでる。ドロドロしてるけど、何かきもちいいー。はぁーんE気持ちは沖田ヒロユキか。
「い、痛っ。」飛び起きると、上にDJが乗ってる。-恐怖-とっさに蹴りをわきばらにぶっこむ。「い、痛ぁい。」悲鳴とも叫びともつかぬ声をあげたDJもまっぱだった。何が起きたのかわからぬまま、見渡すとまず、目に入ったのはDJのナニ。
チ、チーセー。あんなのも入んねぇのか俺。とか言ってる場合じゃねえよ。言動とは裏腹に硬直してる俺のナニをその辺に捨てられたパンツに押し込むとDJが言う。
「イージャン。気持ちいーでしょ。」蹴った脇腹まだ痛そー。でも周りを見渡すとレコードの山。
どうやらこのDJの家らしい。その中でも奇異なのは折れた割りばしと赤いバラ。何されたんだ、俺。
「気持ちもよくねえし、男のコケンに関わんだよ。」言い残して家を出た。もちろん自分の荷物を持ってね。階段を降りると、ちょうどタク。ラッキー。こんな事あってラッキーもクソもねえけど、俺って幸せ。でもここどこだよ?
「青葉台まで。」タクシーはピーカンの空の下をすべりだした。

………続く。

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